高校生とは40年も離れてるのね

仕事柄年に何回か審査を依頼されることがあり、昨日もある県の高校写真部合同展の審査と講演をしてきた。

 

昔もここに呼ばれたなあと思っていたら14年前だった。『旅するカメラ』が出たばかりの頃で、その時は仕事にまつわる写真の話をした。内容はまったく覚えていない。多分聞いていた高校生もきれいさっぱり忘れているだろう。

その合同展には、毎回ゲストで写真家が呼ばれて講演をするのだが、全員自分の仕事の話をするそうだ。だからというわけではないが、今回はちょっと変わった話をしてきた。

 

「良い写真ってなんだ?」

審査というのは善し悪しを分けるものだが、スポーツと違って明確な判断基準がない。結果は審査員の好みで随分と変わってくる。今回の審査は、各学校の写真部の顧問の先生20名ほどと僕とでポイントをつけていくもので、得点が多い順から最優秀、優秀、奨励となる。

明確な判断基準がないけれど、上位はなんとなく「写真的要素が強いもの」になっていく。選ばれる写真は審査員の良い写真の定義に合ったものということになる。

 

僕は講演会で、その「良い写真の定義」を疑ってみようという主旨だった。高校生だからと忖度せず、あえて専門の大学や社会人向けの内容にしてみた。

 

写真は見てから善し悪し、好き嫌いを決めているのではなく、あらかじめ頭の中にあるものを目の前の写真にあてはめて見ている。写真に限らずほとんどの定義は時間と場所によって大きく異なる。だから常に「良い写真」を疑ってみる。定義は更新し続ける必要があるよ。

 

ということを、参考写真を交えて話していった。たぶん難しかっただろうなと思う。でもいいたいことは言えた。その後、展示会場に移り、彼らの写真を見ながら3時間以上会話した。これは面白かった。

 

入賞者の8割は女子で、マクロ撮影が多い。男子は望遠レンズが好き。どちらも色と形をうまく切り取っているものが入賞していた。スナップではなく、考えてから撮るコンストラクテッドフォトもある。

 

彼らにずっと言い続けていたのが

○ 寄ってうまくまとめた写真なんて、数十年経って見たらつまらないよ

 ○ 余計なものが写っている写真ほど、あとで見て楽しいもの

○ 背景がボケているほうがいいと思っているようだけど、ボケてるってことは情報がなくなっているってことだよ。もったいなくない?

○ コンテストに入賞するような写真が「役に立つ写真」だとしたら、意図的に「役に立たない写真」を撮ったほうがいい

○ いまはどこか特別な場所に撮りにいくよりも、学校を撮ったほうがいんじゃない

○ 教室とか廊下とか体育館とかグラウンドとか

○ 学校って特別な場所。後で撮りたいと思っても撮れない

○ 渡り廊下って学校以外で見たことない。今は普通だと思っていても、特別なものってたくさんある

○ みんなが写真を撮る時代に、写真部の役割はアーカイブすること

○ 自分のための写真以外に、みんなのための写真を考えて撮るのは写真部の使命だから

 

意図しないかぎり写真は残らない。だからそれを残すのが写真をやっている者のつとめ。撮って分類してアーカイブする。それはコンテストの入賞よりもずっと大事だと思う。

お土産は米沢牛の駅弁

3か月に一度1日は米沢の日。8月、11月、2月、5月の1日は米沢に帰ろうと決めた。トンネルを撮るためだ。今撮りたいのがトンネル(笑)

 

米沢から新潟に続くローカル線から見えるトンネルが魅力的なのだ。

とりあえず新幹線に乗って米沢まで行ってラーメンを食べて、友人に駅まで迎えにきてもらった。

 

今回は家に泊めてもらう。同級生達の近況を聞くと定年後をどうするかということで頭をなやませているらしい。贅沢ななやみである、とは思うのだがそれぞれ大変なんだそうだ。早期定年したやつは離婚したとか、子供が出て行ってしまったて夫婦二人だけの生活なんて想像できないとか色々ある。

 

翌日は朝からずーっと電車に乗っていた。時刻表を調べて連結する便を乗りついだ。自分が電車好きだったのに今更きがつく。フジのGFW670でカラーネガを20本。まあまあの取れ高だった。

お祝い事じゃなくても、お赤飯はおいしい

先週金曜日の夜は、ギャラリー冬青で現在行われている写真展の作家のトークイベントがあった。

 

パトリック・タベルナ写真展「夏の名残り-L'arriere saison」

http://www.tosei-sha.jp/TOSEI-NEW-HP/html/EXHIBITIONS/j_1810_taberna.html

 

彼を一言であらわせなら、旅先で家族を撮る写真家。

そんなの誰だって撮る。それを表現まで高めたひと。

パリでもっとも人気のあるギャラリーの作家で、世界中にファンがいる。

ITエンジニアとしての顔を持ち、休日を利用して自分の子供達を撮っている。カメラはローライも使うがメインはユビテルというトイカメラ。美しいスクエアのカラープリントとファンタジックな写真。

 

トークショーではいくつかの示唆的な言葉が語られ、とても面白いものだった。

 

 

家族を撮ったら まず最初に見せるのが約束

気にいってもらえなかったら箱に入れてしまって、時間が経つのを待つ

編集は撮影後時間がたってから行う。撮影時のイメージが消えてから

家族の中にある自分と外側の自分を往復する

セレクトによって家族写真という枠を外す

外部からの視点を持つ、だが外部からの視点にだけこだわるのは危険だと考えている

自伝的要素が強いもの

旅先であることの重要性

パリでの生活の中では写真を撮らない

プリントは専任のプリンターがいて週に一度はコミニュケーションをとっている

思春期のとき始めて撮ったのは彼女の写真

これは大成功だった

彼女は今の奥さんとなった

写真を専門的に習ったことはない

箱に入れてしまうことで撮ったときのイメージを一度忘れてしまう

コンテキストの分断

撮影と写真を分断する行為

 

そして一番響いたのが、今回の作品は彼がミドルエイジクライシス(中年の危機)に陥ったときのものだったことだ。はたから見れば幸せそのものの作家人生に見える。本人もとても幸せな人生だと思っていたそうだ。

 

ところが50歳を迎えたときに突然この幸せが消えてしまう不安に襲われたというのだ。写真も見たくないほどの落ち込みで、自分ではどうしようもない。そんな時でも作家として生きていかなければならない。

 

今はもう先回りして不安になるのをやめたのだと語っていた。終了後、彼に「実は僕もそうなんだよ。何年くらい落ち込んでいたの」と聞いたら「4年かかった」と言っていた、そして「時間だけが解決方法だった」とも。

 

そうか4年か。僕はまだ2年、まだまだだな。でも彼の話は同世代の写真をやるものとして響いた。聞く前と聞いた後では気持ちがちょっとだけ軽くなった。

 

来年1月はギャラリー冬青で僕の写真展が予定されている。準備をはじめないと。いい時も悪いときも写真で生きていく人生を選んだのだから。

 

 

 

 

お店にかけられた看板には「Coffee Curry Wine」とある

19歳のときに東京に出てきて2年以上アパートに電話がなかった。もっとも自分だけじゃなくてアパート暮らしの学生はみんなそうだったからそんなに困ったりはしない。

 

大家さんにとりついでもらえたし、そもそも電話が必要なことってなかった。ただ風邪をひいて倒れたりすると大変。若いのだけど慢性的な栄養失調だから抵抗力が弱い。毎年のようにインフルエンザで倒れていた。

 

そうなると3日間ほぼ絶食状態になる。すると誰かが様子を見にやってきて、慌てて食料を買ってきてくれた。とはいえカップうどんくらいだが。それとポカリ神話のようなものがあって、風邪をひいたらポカリだった。

 

アパートには何もない、テレビもない、パソコンなんて影も形もない。レコードとラジオがあるくらい。だから学校には授業に出なくても毎日行っていた。誰にも会えないから日曜日は嫌いだった。

 

当時江古田は喫茶店の密集率が日本一、と雑誌に書いてあった。それぞれに「行きつけの店」のようなものがあったものだ。

 

僕は「プアハウス」というお店に行っていた。同じ学年で演劇学科だった三谷幸喜も来ていた。癖になる辛いカレーと粗食という謎のメニューがある。トマトのスパゲティと鰯のトースト。ワインやウィスキーもあったしチーズの盛り合わせもある。

 

深夜、閉店の11時近くになると常連客がやってきて、そのまま1時くらいまで遊んで帰る。ホッケーゲームだったりダーツだったり。そのときそのときのブームがあった。夜中に光線銃を持って二子多摩川にサバイバルゲームをやっていたこともある。かと思えばそのままオフロードバイクで奥多摩まで走りに行っていたこともある。

 

そんなことができるのはサラリーマンじゃなくてフリーランスだけ。ライターやカメラマンやミュージシャンや役者や何をやっているのかわからないものばかりがお店に集まっていた。

 

僕が新聞社をやめたのも、彼らを見ていて「なんとかなるだろ」と思ったから。ご飯の食べ方もお酒の飲み方も音楽も遊びもプアハウスで教えてもらった。

 

19歳で通い始めたお店は今年で幕を閉じることになった。40年続いたというのに、店主も内装もメニューも味もまったくといっていいほど変わらなかった。カウンターに座って見える景色は19歳の時と同じ。

 

娘ができたときに「この子が大きくなったらプアでバイトできたらいいな」と思っていた。その夢は今年かなった。日曜日のバイトが足りず2カ月ほど手伝うことになって、僕は一度だけお店に見に行った。

 

プアハウスは昨年体調の問題で閉じて、今年つかのま再オープンしたがまた閉じて、ついに今年いっぱいで引き払うことになってしまった。

 

2Bのあったスタービルは取り壊しが始まり、去年まで江古田のランドマーク的存在だった「おしどり」もすでにあとかたもなく、どんどん江古田が遠くなってくる。

 

後片付けを手伝いにいったときにお店で使っていた食器をわけてもらった。ちょっと重めの黒塗りがきれいなカレーとスパゲティと粗食の器とコーヒーカップ。

 

ふと思ったのだが、僕がワークショップをやっているのもプアハウスからの影響なのかもしれないな。

 

 

 

 

 

今週末から始まるH3期は若干名募集中です。初回お試し歓迎です

ワークショップ2B&Hサイト 結構充実してきました。

workshop2bn.themedia.jp

 

週末はワークショップH2期と3期の間を利用して川村美術館ツアーをやった。良い天気にめぐまれて、お昼は芝生の上にお弁当を広げてとピクニックみたいだった。環境といい、展示物の量といい質といい、本当に良い美術館だ。

 

日曜日は帰りがけに原宿でやっていた」写真集飲み会」というアートブックフェアに寄ってみた。今年は毎年行われていた「東京アートブックフェア」がなくなってしまった。一説によれば人が集まりすぎて開催できなくなったという。それだけ人気のイベントになっていたのにもったいない。一昨年に出てみたのだが週末の人の入りはすごかった。

 

「写真集飲み会」ももう3年くらい続いているんじゃないだろうか。行ってみたら大賑わいだった。知っている出版社や写真家も多く出ていた。

 

ここ数年写真集の形というものが大きく変化してきている。たとえば一冊の本の中で紙の種類を変えてしまうとか今までそんなことはできないと思われていたようなことなど、デザインもそうだが、内容も従来の写真世はまったく違っている。写真だから対象物はあるのだが、写っている対象物にまったく依存していない。テキストもないし、写真が自立している。

 

面白い本がたくさんあって、つい「これいくらですか」と聞いてみるのだが家の本棚にもうスペースはない。だいたい3月に数百冊を処分しているのだ。でも先週買ってしまったけど。

 

本当にどうしようか最後の最後まで悩んだのがこの2冊。

 

伊丹豪「Photography 」

http://www.flotsambooks.com/SHOP/PH03470.html

 

以下サイトから抜粋

これは見開き2枚で見せる写真ではなく、1枚の写真を見せるための本です。1枚の写真を見るという体験はどういうことでしょうか?

人間の視覚は広く、1枚を見ようとしても周りにあるものを含め、その1枚を見ています。なるべく周りにあるものの存在を意識せずに、1枚の写真に向き合うように考えました。

その結果、この本は左上に向かってページをめくります。頭の位置と視線の位置を変えることなく、集中して写真を見ていても最後までめくることが可能です。 写真の並べ方や順番で、何かを伝えるというようなことは考えてないので、1000部全て順番が違います。私は写真とは端的に目の前のコピーだと思っているので、本にするときに、その写真を束ねれればよかったのです。私や、あなたが見知っているはずのものの精巧なコピーは、実際に見ているものに限りなく近い何か別ものです。それこそが写真であると私は考えます。

 

 

山谷佑介「into the light」

https://www.tandmprojects.com/products/into-the-ligh

 

以下サイトから抜粋

「Into the Light」は山谷佑介自身が家庭を持ち、他人の「家」に興味を持ったことをきっかけに東京郊外の住宅街を深夜に赤外線カメラで撮影したシリーズ。無機質であるにもかかわらず、住人とともに変化を続け、人間の営みとは切り離すことができない「家」は、不可視光線に反応する赤外線カメラを使っても、もちろん覗くことはできない。覗き込むことのできない諦めや苛立ちと、それでもなお人間の営みを覗いてみたいという欲求は、「見ること」と「見られること」を強く意識させた。他者から見られるということに恐れを抱く反面、日々多くの情報を目にしている私たちは、より多くのものを見たい・知りたいという要求が増しているという矛盾を抱えている。深夜の住宅街に漂う、自己と他者との圧倒的な隔たりの中で、他者の領域に足を踏み入れ撮影することに対して山谷は、「自分と世界との隔たりを感じさせながらも、妙な居心地の良さを感じさせた」と語る。

 

 

見ていて思ったのだが、自分がブックフェアに参加していれば間違いなく買っただろうということ。参加することで意識が変わってくるから。グループ展とブックフェアは見るより出たほうがいい。なので来年は参加してみようと思っている。

 

 

鯖缶でパスタ

不可能と思えていたサイトづくりは要領が分かってきて面白くなってきた。

 
なんでもそうだけど、できないことができるようになるのは面白い。コラムを上げ、フィルムカメラのときの露出のHOW TO をあげ、徐々に形になってきた。あいかわらず地味だけど。トップページがモノクロ写真のせいかな。
 
コラム的な話はそっちにあげておきますのでたまには見にきてくだっさい。
 
 
近頃吉祥寺に縁がある。住んでいる阿佐谷から3駅しか離れていないのだが、引っ越してきてからいままでほとんど行っていなかった。それが写真集専門店book obsgura https://bookobscura.com を知ってから行く機会が増えた。以前も書いたが写真集書店には珍しく若い女性が店主だ。
 
今日も井の頭公園を抜け弁財天横の階段をあがり参道の黒門をぬけて左側のローソン横のお店に向かう。井の頭公園は晴れていても曇っていても小雨でも気持がいい。池のまん中をを通る橋を渡ればすぐなのだが、いつも大回りをしていく。
 
この間はおにぎり持参でベンチで食べた。食後にbook obsguraでコーヒーを飲む。その時の作家に合わせたコーヒーを店主が考えて淹れるのだそうだ。今日は深入りだった。展示している作家が黒を大事にする山谷佑介さんだったからだ。
 
山谷さんのモノクロは黒がきれいだ。本人がいたので聞いてみたら「フェロがけ」をしているのだそうだ。フェロなんて知っているひとはもうほとんどいないはず。バライタ印画紙表面のゼラチンを銀の板で溶かして滑面にする技術だ。それができるラボをみつけてやってもらっているのだそうだ。
 
右側の壁に不思議な写真がある。壁を撮っているようだが、なんか不思議な感じがする。ずっと見ていたら店主がその謎を教えてくれた。面白いこと考えるもんだ。すっかり彼のファンになってしまった。
 
今日は石橋英之「Presagr」を買って帰った。フランス在住の作家でIMAのギャラリーで展示を見ていた。写真集の造本がすごい。懲りすぎた造本はいやらしい感じがするものだが、それがまったくない。
 
book obsguraには僕の本も置いてあって「dagasita」の比較的きれいなものが5000円で出ていた。探してくれている人も多い本なので是非お問い合わせください。
実は僕の手元にも10冊くらいしかなく、冬青社にも在庫がないので思わず買ってしまおうかと思ってしまった。
 
とにかく店主が写真集のことをよく知っているので話を聞くのが楽しみで行ってしまう。店内が明るいっていうのもいい。
 
家に帰ったら友人の本好きがきていて、大喜びで石橋英之の写真集を見ていた

新しいウェブサイトをつくった 

ワークショップを15年もやっているのに、専用のウェブサイトを持っていなかった。

 

この日記の告知だけで10年近く、Facebookに専用ページをつくって5年くらい、そんなのでよくやっていけたものだ。

 

だいたい、このワークショップで何をやっているかわからないだろう。Hになってからはなおさらだ。そこで初めてサイトをつくってみることにした、自力で。

 

頼めば作ってくれる人もいるが、それではあとで変更したいときにレスポンスが悪くなる。それに、、、

 

自分のサイトはまだインターネットが普及する前の2000年に作った。いや、作ってもらった。その後2年に一度は大きなリニュアルを重ねていたが、その制作者と連絡がつかなくなった。

 

そうすると、もうどうしようもない。プロバイダーやドメインの管理もしてもらっていたから、更新もできないし、期限がきたら消えてしまう。

 

なので今度は自力で、ということで、とりあえずネットで作り方を検索してみた。アメーバのものがいいらしいということで登録。

 

YouTubeに上がっていた作りかたを見ながら始めたのだが、ついていけない。格闘すること4時間、自分が何をやっているのかさえわからない。もう無理だ、とはいえ放りだすわけにもいかない。

 

不細工であっても、ダサくても、からんだ糸をほどくように作りあげた。https://workshop2bn.themedia.jp

 

小さいけど目玉コンテンツも用意した。

コラムのページの中の「新旅するカメラ」だ。

未発表で、昨年書いていたものを数点アップした。その後は、週一くらいのペースで順次のせていくつもり。

 

この日記をみてくれている方の多くは「旅するカメラ」も読んでいただいているだろうから、是非ご覧ください。

 

サイトはちょっとずつ手を加えて、読み物も増やそうと思う。書きたいことはたくさんあるからね。

 

H3期募集中です

月曜日は千葉の川村美術館へ。

 

東京駅9時55分発の直通バスがあり11時に美術館につく。常設展、企画展「言語と美術」を見るとあっという間に2時間。

数年前行ったときと常設展もかなり変わっている。いったい何点収蔵しているんだろう。あいかわらずロスコーの部屋はすごい雰囲気だった。薄塗りのレイヤーで描かれた絵は緊張と弛緩の両方を感じる。絵の端っこの重なったところばかり見ていた。まさか抽象絵画がこんなに好きになるとは思ってもいなかった。

敷地はかなり広くモネの庭園を模した池もある。散策コースの森の中で、一緒に行った友人が持ってきたウクレレを弾いた。スナフキンみたいでよかった。今度旅行するときはぼくもウクレレを持っていこう。 

ウクレレは先月のルデコで「発表会」をやった。とてもライブとは言えない(笑)初めて半年、合わせるという楽しみを覚えた。

演目はベンチャーズの「ウォークドントラン」。邦題は「急がば回れ」だ。他に4曲披露。「あー、やんなっちゃった 2Bバージョン」がうけた。

今は「five foot two」を覚え始めた。歌詞を直訳すると身長158センチの彼女といいう歌。2フィート5インチは158センチだ。

気持ちがいい曲だ。ウクレレにぴったり。

 

美術館の帰りに、浅草橋にあるギャラリーのグループ展により、昨日はルデコのグループ展を見た。昔はグループ展より個展と思っていたが、最近はグループ展のほうが面白いと思うことが多い。

ギャラリー冬青ではパトリックタベルナをやっている。ヨーロッパでは著名な写真家で、日本人のメンタリティを感じる部分がある。いい色の写真だ。うまい写真じゃなくて欲しくなる写真。このへんの感情はなんなのだろう。

ロベルトドアノーのお孫さんが、彼の友人で写真展を見に来たそうだ。映画監督だそうで、ドアノーのドキュメンタリーも制作している。彼女は僕の写真集「demain」をとても気に入ってくれたと対応したスタッフから連絡があった。

 

だからというわけではないが、個人的にはブレッソンよりドアノー派。

正方形だからかな。

 

たこ焼きがおいしい季節になってきた

フィラデルフィアかたやってきた便器を見に上野まで行ってみた。「デュシャン 人と作品」上野国立博物館。

 

「泉」というタイトルがつけられたこの便器は、写真でさんざん見ていたが、本物は初めて見た。便器は思ったより小さかった。

 

もともとのオリジナル便器?は壊されたということで、現在残っているのはレプリカ?いということになる。

 

なぜ?かというと、この便器はデュシャンが作ったわけではなく、当時普通に売られていた既製品だから。つまり「本物」と「レプリカ」に差異はない。デュシャンの認めた便器は、世界中で200個以上あるそうだ。

 

美術史をやると絶対出てくるのがこのデュシャンの便器。作品タイトルは「泉」。洒落てる。とにかくこの便器が美術史の世界を根本的に変えたということになっている。

 

なので本物?を見にいったわけだ。残念ながら「大ガラス」は東大駒場にあるレプリカだったが「車輪と椅子」や「階段を降りる女2」は本物がフィラデルフィア美術館から来ていた。

 

初期の絵画がいい。テグスをキャンバスに貼り付けて描いた

『チョコレート粉砕器』という作品がことのほか好み。

 

第一次世界大戦を挟んだ激動の時代にアーティストになり、どんどんスタイルを変えていって、ついにはアートをやめてチェスのプロになってしまう。多彩なというか多才というか、人生いそがしかっただろうな。

 

次の日はTOPギャラリー2Fの「愛について アジアン・コンテンポラリー」を見てきた。

 

ここ10年くらい、コンテンポラリー(頭痛が痛いになってるな)写真のほとんどを占めているのがポートレートだ。今回も全ての作家がポートレート。個人的な問題を通して社会性を浮かび上がらせる。「私の話を私達が考える」という方法だと言える。それぞれの個人やコミュニティや国がかかえていることを写真にしている。

 

だから見て楽しいということはなく、テキストを読むことをきっかけに考えることを要求される。巨大なプリントを前にいつも居心地の悪さを感じる。

 

日本代表は須藤絢乃の「幻影 Gespenster」。彼女の初期代表作で今年6月に六本木2121で展示されていたのも含め何度も見ているが、このシリーズは見ればみるほど面白くなる。今回はある仕掛けに気がついた。自分もやってみようと思っていたことだった。

 

3Fはコレクション展。地域、年代を超えたグループ展みたいで面白い(笑)「考えるな感じよ」でいい。見ているだけで楽しい。視覚的な欲求にこたえてくれる。「たのしむ、まなぶ、夢のかけら」甘いタイトルがいい。

 

展示の中にユージンスミス「カントリードクター」があった。写真が写真らしくふるまえた時代の写真だ。昔々、こんな写真が取れたらいいなと思っていた。もう40年も前の話だ。

 

 

 

 

 

 

 

フィルムで撮られたものについつい目がいく

H3期募集中です。連続講座ですが、1回目のみのお試しでも構いません。質問はworkshop2b10th@yahoo.co.jpまで。

 

ルデコのグループ展を機材の面から振り返ってみる。

 

もともと2Bはフィルム中心の講座だったので、今でもフィルムを使う人も多い。これは一般的に見て特殊な例だろう。

 

しかし2Bが終了し暗室がなくなったため、これまでのグループ展よりも印画紙でプリントする人は大きく減ってきた。

 

3階は終了展なのだが、フィルムを使った人は20名中7名、その中で印画紙にプリントしたのはモノクロバライタが3名、Cタイプカラープリントが1名のみだった。

 

前回までは2Bの暗室が使えたことから、カラープリントをするものが半数近くいたが、今回は激減した。

 

貸し暗室でカラープリントができるところが少ない。昨年までは2Bで気軽にプリントできていた。。全フロアを通しても印画紙率は減ってきている。

 

プリントをするもので、自宅暗室を持っているものは少なく貸し暗室を使うことになる。八丁堀シャティーヌを利用しているものが多い。プリンターの金子さんの指導を受けられるためだ。そのほかでは市ヶ谷カロタイプ、新宿プレイスM、横浜ダークルームなど。カラープリントはワークスの名前があがった。

 

フィルムは使うがスキャニングしてデジタルプリントというのもある。新宿ヨドバシカメラだと35ミリネガカラーを900万画素でスキャニングしてくれるのだが、発色がとてもいい。

 

最新のデジタルカメラよりも色相、彩度、コントラストとも明らかにいい。もっとも撮影条件はかなり限られ、なんでもうまく撮れるわけではない。

 

フィルムではないが、ライカM8で撮られたものが良い色で驚いた。10年以上前のカメラにも関わらず今でも使える。

 

デジタルカメラで意外と目立ったのがオリンパス。PENユーザーが多い。ソニーのαシリーズも多い。Rよりもノーマルの方の2型。富士フィルムとシグマも熱烈な愛好者がいる。

 

ニコンとキヤノンは新型ミラーレスの話題で持ちきりだったが、実際に両社の一眼レフを使っている人は一時期に比べかなり減っている。来年はミラーレスのニコン、キャノンが多くなるかもしれない。

 

プリンターは相変わらずエプソンが多いが、顔料系のA3ノビがずっと主流だったが、染料系で小型のものも多くなってきた。特定機種だとEP50Vの人気が出てきた。

 

プリンター用紙では、今回SIELのやピクトリコのメタリックグロスを多く使った。これまでは半光沢やバライタ調のペーパーをメインに考えていたが、意外とメタリックが展示に合うのがわかった。カラー、モノクロともに使い勝手がいい。

 

変わり種ではホログラムペーパーを使ったものがあった。魚の表面の質感を出すために使ったのだが、とても効果的に見えた。

 

15年やっているとその時々の流行りのようなものが見えてくる。2013年から制作の発想が決定的に変わったように思える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

来年のルデコは10月15日から

 

ルデコウィークが終わった。最後は台風の影響で慌ただしかったが、無事終わることができた。参加してくれた皆さん、来てくれた皆さんありがとうございました。

 

80人を越す人数の展示は想像以上の密度。カラー、モノクロ、デジタル、フィルム、クラシックスタイル、コンテンポラリー、なんでもある。サイズも壁一面からチェキまで。

見に来てくれた方々の感想の多くは「よくまあ、これだけバラバラの個性が集まって成立するものですね」というものだった。多くのグループ展は、その集まりごとのテーマを持ち、まとまりがあるもので、それゆえグループ展ということになる。

 

その「らしさ」がないのが「らしさ」になっている。ということだと思っている。

 

参加してくれた女性の10歳になる娘さんがルデコに来てくれた。その夜にお母さんにに話したことが全てを物語っていたので驚いた。

 

「お母さん、写真の人たち、個性ありあり!!個性的な人が多いよね。あんまり普通にいない。でも、個性的だけど自分の個性を押し通すんじゃなくて、違う個性の人の写真を見ていろいろ感想を言ったり、自分の写真に対する他の人の感想をたくさんよく聞いて、『こういう風に感じる人もいるんだなぁ』って違う個性を楽しんでいるんだね。だから、わたしの話も良く聞いてくれて、みんな優しい人だったんだね。」

 

僕がグループ展でやりたかったのはまさにこれ。そして今ワークショップでいつも言っていることです。

写真のワークショップH3期の募集

 

写真のワークショップH3期の募集です。1027日からのスタートです。

 申し込みフォーム

https://form.run/@asagayah

 

9月30日まで渋谷ルデコにてワークショップのグループ展を開催しています。どんなことをやっているかわかりますので是非お越しください。渡部も在廊していますので声をおかけください。

 

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